フェミニズムとは、女性が男性と同等の権利と機会を持つべきだとする思想や運動のことです。
近年、SNS等で目にする機会が増えた「フェミニズム」。言葉の意味や歴史、そして目指す社会像について、正しく理解している人は必ずしも多くはありません。
この記事では、フェミニズムの基本的な知識から、フェミニズムに反対する「アンチフェミニズム」のこと、そしてフェミニズムが目指す未来についてわかりやすく解説していきます。
フェミニズムの意味とは?
フェミニズムとは、女性が男性と同等の権利と機会を持つべきだとする思想や運動のことです。
女性が社会的に不利な立場に置かれている現状を改善し、さまざまなジェンダーの人々が平等に機会を得ることができる社会の実現を目指しています。
誤った理解をされがちですが、フェミニズムは「女性優位」を目指すものではなく、「すべての人の人権が尊重され、自分らしく生きる道を選択できる社会」の実現を目指しているものです。
日本ではまだ女性の管理職や政治家の割合が少なく、賃金格差も存在しています。 例えば、月経による体調不良や、妊娠・出産にまつわるライフステージの変化の中で、継続的に働くことが難しかったり、高等教育の機会を諦めざるを得ない現状は、女性本人の問題ではなく、社会側の問題と言えるでしょう。
また、成長過程で、「家事や育児、介護を担うケア存在であるべき」といったジェンダーロール(性別役割)を求められることも多く、「女性は学ばなくても男性と結婚すればいいからいいよね」などのステレオタイプに基づくハラスメントも存在しています。
その結果、職業や生き方の選択肢が少なくなり、経済的自立や職業選択などが難しい状況に置かれていることもあるのです。
フェミニズムは、このような性差別的な状況を改善し、女性が男性と同じようにリーダーシップを発揮したり、経済的に自立したりできる社会を目指しています。
フェミニズムの歴史を深掘り
フェミニズムの歴史は長く、その変遷の中で、さまざまな主張や活動が生まれてきました。ここでは、海外と日本のフェミニズムの歴史をそれぞれ紐解いていきます。
海外のフェミニズムの推移
- 第一波|参政権を求めて
- 第二波|女性の解放を目指して
- 第三波|女性の多様性を訴える
- 第四波|SNSで連帯を示す
1. 第一波|参政権を求めて
19世紀後半から20世紀初頭にかけて起こった第一波フェミニズムは、女性参政権の獲得を主な目標としていました。
当時の女性は、男性と同じように教育を受けることや、財産を所有すること、職業に就くことさえ制限されていました。
この状況を変えようと、多くの女性たちが立ち上がり、参政権を求めてデモや集会などの活動を行いました。
その結果、1920年にはアメリカで、1928年にはイギリスで女性参政権が認められるなど、徐々に成果が現れ始めました。
例: イギリスでは、エメリン・パンクハーストが率いる女性社会政治同盟(WSPU)が、過激な抗議活動を行い、世論を喚起しました。
2. 第二波|女性の解放を目指して
1960年代から1980年代にかけて起こった第二波フェミニズムは、女性の社会進出と性差別からの解放を訴えました。「ウーマン・リブ」とも呼ばれています。
この時期は、女性が家庭の外で働くことが増え始めましたが、依然として賃金格差や昇進差別、セクハラなどが存在していました。
第二波フェミニズムは、これらの問題を解決するために、法律の改正や意識改革などを求めたムーブメントでした。第二波フェミニズムのスローガンは「Personal is Political(私的なことは政治的なこと)」です。
避妊や中絶の権利、DV(ドメスティックバイオレンス)からの保護など、女性の身体の自由に関する主張も展開されました。
1960年代のアメリカでは、宗教上の理由から人工妊娠中絶が違法とされていました。望まぬ妊娠や貧困など、さまざまな事情から中絶を希望する女性たちに、安全な中絶手術を提供した女性たちによる地下組織「ジェーン」の活動なども精力的に行われ、後の法改正につながっています。
例: アメリカでは、ベティ・フリーダンが著書『女の神秘』で、専業主婦としての生活に疑問を投げかけ、女性の抑圧された状況を告発しました。
3. 第三波|女性の多様性を訴える
1990年代以降に起こった第三波フェミニズムは、多様な女性の生き方を尊重することを重視しました。
第二波フェミニズムは、白人、中流階級、異性愛者の女性の視点が中心でしたが、第三波フェミニズムは、人種、階級、性的指向などの違いを超えて、すべての女性が自分らしく生きることができる社会を目指しました。
また、性暴力やセクハラ、ボディイメージなど、女性を取り巻く問題に対して、より多角的な視点から取り組みました。
例: インターネットの普及により、多様なバックグラウンドを持つ女性たちが、自分の経験や意見を発信できるようになり、フェミニズム運動はさらに多様化しました。
4. 第四波|SNSで連帯を示す
2010年代以降に起こった第四波フェミニズムは、ソーシャルメディアを積極的に活用したことが特徴です。
セクシャルハラスメントや性的暴行の被害者が自身の経験を公表し、連帯を示した「#MeToo運動」のように、性暴力やセクハラ被害を告発する動きが、ソーシャルメディアを通じて世界中に広がり、大きな社会問題となりました。
また、オンライン上でフェミニズムに関する議論が活発に行われるようになり、若い世代を中心にフェミニズムへの関心が高まっています。
例: インフルエンサーやYouTuberなど、影響力のある人たちがフェミニズムに関する情報発信を行うことで、より多くの人々にフェミニズムの考え方が広まっています。
このように、フェミニズムは時代とともに変化し、その主張も多様化してきました。 現代のフェミニズムは、単に「女性 VS 男性」という対立構造ではなく、性別に関係なく、すべての人が平等に扱われる社会を目指しています。
日本のフェミニズムの推移
- ~1960年|「良妻賢母」と日本の家族観
- 1945年|女性の参政権から70年
- 1986年|男女雇用機会均等法の制定
1. 「良妻賢母」と日本の家族観
日本でも、「男性は仕事、女性は家庭」というジェンダーロールが根強く存在しています。 このような考え方は、女性の社会進出を阻む要因の一つとなっていました。
明治時代から戦後初期(~1960年代)ごろには、女性は家庭を守り、夫を支え、子どもを育てることを示す「良妻賢母」という女性像が強く根付いていました。
このことから、日本の伝統的な家族観の中では、女性が外で働くことが良しとされず、教育機会や社会進出が制限されていました。
作家の平塚らいてうや政治家の市川房枝など、一部の女性たちは、女性の権利向上や社会参画を求めて活動していました。しかし、当時の社会では、これらの活動は「反社会的」と見なされることも多く、大きな広がりを見せることはありませんでした。
2. 女性の参政権から70年
日本では1945年に女性の参政権が認められましたが、それから70年以上経った現在でも、政治における女性の割合は低いままです。 2021年時点で、衆議院議員に占める女性の割合はわずか9.7%に留まっています。
3. 男女雇用機会均等法の制定
1986年に男女雇用機会均等法が施行され、女性も男性と同じように働くことができるようになりました。 しかし、依然として女性は非正規雇用の割合が高く、賃金格差も解消されていません。
フェミニズムが目指している社会像
フェミニズムが目指す社会像は、一言で言えば「性別による不平等や差別のない社会」です。これは、女性が男性と同じように、教育、仕事、政治など、あらゆる分野で自由に活躍できる社会を意味しています。
- 社会像①|平等な権利を求めて
- 社会像②|女性同士の連帯を作る
- 社会像③|昇進できる社会を目指す
社会像①|平等な権利を求めて
フェミニズムは、女性が男性と平等な権利を持つことを目指す運動です。これは、単に女性の権利を主張するだけでなく、性別に関係なく、すべての人が平等な権利と機会を持つ社会の実現を目指しています。
例えば、日本では、女性の政治家や企業の役員が少ないという現状があります。これは、女性がリーダーシップを発揮する機会が男性に比べて少ないことを示しています。フェミニズムは、このような不平等をなくし、女性が社会のあらゆる分野で活躍できる社会を目指しています。
社会像②|女性同士の連帯を作る
フェミニズムは、女性同士の連帯と相互扶助を重視します。これは、「シスターフッド」と呼ばれ、女性が互いに支え合い、励まし合いながら、社会を変革していくことを目指す考え方です。
例えば、女性が職場でセクハラやマタハラを受けた際に、他の女性がサポートすることで、被害者が孤立することを防ぎ、問題解決を促進することができます。シスターフッドは、女性が力を合わせて、より良い社会を築いていくための重要な概念です。
社会像③|昇進できる社会を目指す
女性の昇進やキャリアアップを阻む、目に見えない障壁のことを「ガラスの天井」と表現することがあります。フェミニズムは、このガラスの天井を打ち破り、女性が能力を最大限に発揮できる社会を目指しています。
例えば、企業において、女性が管理職に昇進する割合が低いという現状があります。これは、女性の昇進を阻む、目に見えない障壁が存在することを示唆しています。フェミニズムは、このような障壁をなくし、女性をはじめとする社会的マイノリティが男性と同じようにキャリアを築ける社会を目指しています。
アンチフェミニズムの立場についても理解しておこう
フェミニズムの考え方が広まる一方で、アンチフェミニズムと呼ばれる、フェミニズムに反対する立場も存在します。アンチフェミニズムには、さまざまな立場や主張がありますが、ここでは代表的なものをいくつかご紹介します。
- 立場①|伝統主義的観点からの反対
- 立場②|「男性だって生きづらい」と反対する人の声も
- 立場③|性産業に属する女性たちとその関係者
- 立場④|宗教的な観点からの反対
立場①|伝統主義的観点からの反対
伝統的な家族観や性役割分担を重視する立場から、フェミニズムに反対する人々がいます。彼らは、女性は家庭を守るべきであり、男性は外で働くべきだと考えています。フェミニズムが女性の社会進出を促すことは、伝統的な家族観を崩壊させ、社会秩序を乱すものだと彼らは主張します。
立場②|「男性だって生きづらい」と反対する人の声も
近年では、「男性だって生きづらい」という主張を展開し、フェミニズムに反対する人々も増えています。彼らは、男性は社会的に成功することを求められ、プレッシャーやストレスを感じていると訴えます。フェミニズムは、女性の権利ばかりを主張し、男性の苦しみを無視しているという批判もあります。
立場③|性産業に属する女性たちとその関係者
性産業に従事する女性やその関係者の中には、フェミニズムに批判的な立場をとる人々もいます。彼らは、フェミニズムが性産業を否定することは、女性の職業選択の自由を奪うものだと主張します。また、性産業は女性を搾取するものであり、廃止すべきだというフェミニズムの主張に対しては、性産業で働く女性たちは自らの意思で働いているのであり、搾取されているわけではないと反論します。
立場④|宗教的な観点からの反対
一部の宗教団体は、教義に基づき、フェミニズムに反対する立場をとっています。これらの宗教団体は、男女の役割は神によって定められており、それを覆すことは神の教えに反すると考えています。フェミニズムが男女平等を主張することは、宗教的な教えに反するものであり、受け入れられないと彼らは主張します。
フェミニズムに関連する著名人・学者・キーアイコン
フェミニズムの歴史を語る上で欠かせない、著名人、学者、キーアイコンをご紹介します。
関連①|アメリカの「働く女性」
第二次世界大戦中、多くの男性が戦地へ赴いたことで、アメリカでは女性が工場などで働くようになりました。
これは、女性が社会進出を果たすきっかけとなり、戦後のフェミニズム運動に大きな影響を与えました。
関連②|Riot Grrrls(ZINE)
1990年代初頭にアメリカで生まれた、女性中心のパンクムーブメント「Riot Grrrls」。
彼女たちは、音楽やZINE(自主制作の冊子)を通じて、性差別や性暴力に対する怒りを表明し、女性たちに社会変革を呼びかけました。 Riot Grrrlsの活動は、若い世代の女性たちにフェミニズムを身近なものにし、大きな影響を与えました。
関連③|上野千鶴子
日本のフェミニズムを代表する社会学者である上野千鶴子氏は、著書『家父長制と資本制』などで、日本の社会構造における女性差別を鋭く批判してきました。
近年では、東京大学入学式での祝辞が大きな話題となり、若い世代にもフェミニズムの重要性を訴え続けています。
関連④|(G)I-DLE
K-POPなどのアイドルやタレントの中でもフェミニズムを呼びかけている人々がいます。
例えば、韓国のガールズグループ(G)I-DLEは、楽曲やパフォーマンスを通じて、女性のエンパワーメントやジェンダー平等といったメッセージを発信しています。
彼女たちの活動は、K-POPファンを中心に、世界中の若者にフェミニズムの考え方を広める役割を果たしています。
自分なりのフェミニズムを語るためにできること
フェミニズムについて学んだ後は、それをどのように社会に反映していくかが重要です。 自分なりのフェミニズムを語る方法はさまざまですが、ここでは具体的なアクションを4つ紹介します。
- 社会運動に参加する
- 政治に参加する
- SNSなどで発信する
- 周囲の人に話す
できること①|社会運動に参加する
社会運動への参加は、フェミニズムの考えを広め、社会に変化を促すための直接的な行動です。 デモや集会に参加することで、同じ考えを持つ人たちと繋がり、声を上げることで、社会に訴えかけることができます。
例えば、近年注目されている「フラワーデモ」は、性暴力に抗議する運動です。 花を持って街頭に立つことで、性暴力の問題を可視化し、被害者への連帯を示すことができます。
できること②|政治参加
政治参加は、政策決定に影響を与えることで、社会を変革していく方法です。 選挙で投票したり、政治家に意見を伝えたりすることで、フェミニズムの視点を取り入れた政策の実現を後押しすることができます。
例えば、女性議員を増やすことは、女性の視点が政治に反映されるために重要です。 候補者の政策や活動をよく調べ、積極的に投票することで、政治におけるジェンダーバランスの変化に貢献することができます。
議員の男女同数(パリテ)を目指す国内の活動団体に、「FIFTYS PROJECT」などがあります。
できること③|SNSなどの書き込み
SNSでの発信は、フェミニズムに関する情報を共有し、多くの人に関心を持ってもらうための有効な手段です。 自分の考えや経験を発信することで、共感や議論を呼び起こし、社会全体の意識改革に繋げることができます。
例えば、ハッシュタグ「#MeToo」は、性暴力被害の告発を促し、社会問題として広く認識されるきっかけとなりました。 このように、SNSでの発信は、社会に大きな影響を与える可能性を秘めています。
できること④|周囲の人に話すこと
周囲の人に話すことは、フェミニズムを身近な人に理解してもらうための第一歩です。 友人や家族とフェミニズムについて語り合うことで、相互理解を深め、新たな視点を得ることができます。
例えば、ジェンダーに関するニュースや出来事について、自分の意見を率直に伝えてみましょう。 相手が異なる意見を持っている場合でも、丁寧に議論することで、互いの考えを尊重し合いながら、理解を深めることができます。
まとめ
以上のように、フェミニズムは、性別に関係なく、すべての人が自分らしく生きることができる社会を目指しています。
これは、女性だけが優遇される社会ではなく、男性もまた、従来のジェンダーロールから解放され、自由に生き方を選択できる社会でもあるのです。
この概念を念頭に、自分にできる行動は、社会活動から身近な人に話すことまで、多岐にわたります。一人で考えるだけでなく、コミュニティに属して行動することもできるでしょう。
どれも、フェミニズムの考えを広め、社会に変化を促すための重要なアクションです。 自分自身の状況や関心に合わせて、できることから始めてみましょう。



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